「メトロポリタン美術館」

ニューヨークで最初に訪れた美術館が、メトロポリタン美術館であった。The Metropolitan Museum of Art 、通称The Met は、世界最大級の美術館で、設立は一八七〇年である。設立の構想は、一八六四パリアメリカ独立記念日を祝うために集まった米国人たちの会合の席で、参加者の一人であるジョン・ジョンストンによって提案された。その時点で米国は、美術館はおろか一枚の絵さへ国もしくは地方自治体は所有していなかったのである。

その後は基金による購入やさまざまな階層からの寄贈により、現在では絵画・彫刻・写真・工芸品のほか家具・楽器・装飾品など三〇〇万点の美術品を所蔵しているという。ルーブル美術館と同じく、一日で館内を拝観して回ることは、困難である。

別館としては、アッパー・マンハッタンのハドソン川沿いにフランスやスペインの僧院を解体して造られた「クロイスターズ」があり、中世ヨーロッパ美術が展示されている。また元のホイットニー美術館の建物を借りて、二〇一六年三月よりもう一つの別館「メット・ブロイヤー」を開館しており、ピカソの作品などキュービズムを中心としたモダンアート・コンテンポラリーアートの展示も行っているようである。

主な作品で拝観した記憶のあるものは、下記の通りである。

 

古代エジプトのデンドゥール神殿 紀元前一世紀ころ

 エル・グレコ        『トレドの風景』 一五九七年

 ヨハネス・フェルメール   『リュートを調弦する女』 一六六二‐六三年頃

『水差しを持つ女』 一六六四-六五年頃

              『眠る女』     一六六五-六六年頃

              『少女』      一六六六-六七年頃

              『信仰の寓意』   一六七一-七四年頃

尾形光琳          『八つ橋図屏風』  一七一一-一四年頃

ピーテル・パウル・ルーベンス   『ヴィーナスとアドニス』 一六三〇-三六年

ジョルジュ・ラ・トゥール  『悔い改めるマグダラのマリア』 一六四〇年

レンブラント・ファン・レイン   『ホメロスの胸像を見つめる

                       アリストテレス』 一六五三年

エドゥアール・マネ     『舟遊び』     一八三二-三三年

フィンセント・ファン・ゴッホ   『糸杉』   一八五三年

ギュスターブ・モロー    『オイディプスとスフィンクス』 一八六四年

ギュスターブ・クールベ   『オウムと戯れる女』 一八六六年

クロード・モネ       『海辺(サンタドレス)のテラス』 一八六七年

              『散歩、日傘をさす女』 一八七三年

              『睡蓮』        一九一九年

エドガー・ドガ       『舞台のバレエ稽古』  一八七八-七九年

ピエール=オーギュスト・ルノワール  『草原にて』

              『シャルパンティエ夫人とその子供達』 一八七八年

『ピアノに向かう二人の少女』

              『海辺に座る少女』   一八八三年

ポール・ゴーギャン     『マリア礼拝』     一八九一年

グスタフ・クリムト     『メータ・グリマヴェージの肖像』 一九一二-一三年

 

これらの有名な絵画の中で特に印象に残っているのは、当時は印象派の絵画くらいしかわからなかったので、文芸の師匠Mさんより教えて頂いたモローの『オイディプスとスフィンクス』を除いては、モネの『海辺(サンタドレス)のテラス』とルノワールの『ピアノに向かう二人の少女』、『海辺に座る少女』、それとゴーギャンの『マリア礼拝』位であった。印象派が多くの市民をひきつけたのには、それまでの約束事の多い絵画に比べて絵画の内容が自然の風景や日常生活でありわかり易いこと、色調が晴れやかで美しいことにあると思う。

 絵画というものの鑑賞には、下記がポイントとなると思っている。先ず一つ目はその絵画の主題(意味・内容)を理解することである。二番目にその形の表現、つまり造形力と構図がどうであるかということになる。次いで三番目に色彩の組合せによる感情表現である。その上で対象となる絵画から、どの程度の感動を与えられるかである。勿論その画家の人生や作画した時の状況などを知ることは、より深い鑑賞の手助けとなるであろう。

「海辺(サンタドレス)のテラス」 クロード・モネ

 

コメント

  1. NYの美術館といえばFrick Collection、島本さんのアドバイスで出張の序に立ち寄りました。当時のFB投稿が見つかりました。幾度かNYは訪ねていますが、メトロポリタン美術館は通り過ぎるだけで訪ねていません。機会があれば覗きたいですね。

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