『三太郎の日記』 阿部次郎
「 Leben ( 人生)は Prozess der Reinigung (浄化の過程)として初めて意義あり。 Reingung の目標は Das Gute, Das Schön e . (善と美)」 阿部 次郎 『三太郎の日記』 この頃から読書の時に、感銘を受け自分の胸に刻んでおきたいと思う内容の文章に出会ったときには、必ず鉛筆で横線を引きながら読むようになった。そして後から再度その横線部分を読み返すのである。今手元にある『三太郎の日記』を見てみると、購入日は一九六六年八月二六日 金正堂 貳百八拾圓 とあり、大学三年生の時である。この頃に中央公論社より「世界の名著」シリーズが発刊され、その中からかまたは単品で、カント、ヘーゲル、マルクス、エンゲルス、キルケゴール、ニーチェなどを購入したが、そのほとんどすべてを完読できなかったように思う。ただ哲学というものの難解さと人間という存在の不可思議さを多少は理解することができた。 <阿部次郎> 1883年(明治16年)~1959年(昭和34年)山形生れ 大正の教養主義を代表する思想家、評論家。東京大学哲学科でケーベルなどに学び、夏目漱石門に入り森田宗平、安倍能成らと交わる。31歳で『三太郎の日記』を書き、ベスト・セラーとなる。東北大学に招かれ、渡欧。リップス・ニィーチェ・ゲーテなどの研究を紹介し、人格主義の思想を鼓吹した。 小石川植物園