「自費出版の詩集『憧憬』」
富士銀行に入行して二年目の昭和四四年(一九六九年)に、 M 先生のご母堂のお世話で詩集『憧憬』を自費出版した。内容は高校時代と大学時代に書き残した星菫派的な詩と散文詩を取りまとめたもので、稚拙なものであったが、今となればその当時を思い出す記念碑の一つとなっている。なお「憧憬」という言葉と出会ったのは、倉田百三の『愛と認識への出発』であったことが、今回青春の書を探っていて分かった。 同じ頃に友人の K 君も『ながれ』という本を上梓し、その「あとがき」に「青春の思い出がやっとここに残った」と書いているが、本当にその通りである。若書きの『憧憬』の中から、詩というよりも散文ともいうべき二つを取り出して、ここに書き写しておきたい。 詩集 『憧憬』