「ムシカの集い」 読書会
昭和三七年、大学三年生の秋ごろから、サッカー部の同期やその仲間と読書会を開こうという話となり、友人の一人が女学院大学の知り合いと連絡をとり、男女合計で十人前後の読書会を創設した。場所は胡町にある音楽喫茶「ムシカ」で毎週土曜日の夕方五時からに決まった。場所は一階の一番奥のコーナーが常連席となり、コーヒー一杯で約二時間余り談論を楽しんでいた。そして会の名前もいつか「ムシカの集い」となった。
最初は背伸びをして「朝日ジャーナル」の記事からテーマを選んで話そうと試行錯誤したが、うまくゆかないので結局は小説を選んで、それを読んで来て感想を述べあうということになった。初めに読んだ本は確かでないがヘッセの『車輪の下』であったろうか。それから順不同であるが武者小路実篤の『愛と死』、横光利一の『旅愁』、高村光太郎の『千恵子抄』、井上靖の『氷壁』、川端康成の『美しさと哀しみと』、亀井勝一郎の『愛の無常について』、ヘッセの『デミアン』、有島武郎の『愛は惜しみなく奪う』、スタンダールの『赤と黒』、カミュの『シジフォスの神話』、倉田百三の『愛と認識との出発』などであろうか。
昭和四三年の三月に、義兄の経営していた中の棚「萬歳」で解散式を行ったので、一年半弱の短い期間ではあったが、その間夏には宮島の浦の一つで一泊のキャンプを楽しんだり、また冬はスキーに行ったりして、愉しく有意義な時間を過ごせた。
この読書会では途中からひとりひとりが一冊ノートを購入して、それに今現在の自分の想いを文章に書いてそれを皆で交換するようにした。そのノートから昭和四二年の九月に私が書いたものを、二つほど下記に表記することとする。
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