『モシカアル日』 原詩

 モシカアル日、

モシカアル日、私ガ山デ死ンダラ、古イ山友達ノオ前ニダ、コノ処置ヲ残スノハ。
オフクロニ会イニ行ッテクレ。
ソシテ言ッテクレ、オレハシアワセニ死ンダト。

オレハオ母サンノソバニイタカラ、チットモ苦シミハシナカッタト。
親父ニ言ッテクレ、オレハ男ダッタト。
弟ニ言ッテクレ、サアオ前ニバトンヲ渡スゾト。
女房ニ言ッテクレ、オレガイナクテモ生キルヨウニト。

オ前ガイナクテモオレガ生キタヨウニト。
息子タチヘノ伝言ハ、オ前タチハ「エタンソン」ノ岩場デ、

オレノ爪の跡ヲ見ツケルダロウト。
ソシテオレノ友、オ前ニハコウダ――
オレノピッケルヲ取リ上ゲテクレ。
ピッケルガ恥辱デ死ヌヨウナコトハオレハ望マヌ。
ドコカ美シイフェースヘ持ッテ行ッテクレ。
ソシテピッケルノタメダケノ小サイケルンヲ作ッテ、

ソノ上ニ差シコンデクレ。

 ネットには下記の記載があるので、参考までに記述する

原詩の作者ロジェ・デュプラはフランスの登山家。一九五一年六月二九日、ヒマラヤの高峰ナンダ・デヴィ(七八一七メートル)にアタック隊の隊長として登頂中、同僚とともに消息を絶ちました。享年三〇歳。」



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