『古都』と『美しさと哀しみと』
『古都』と『美しさと哀しみと』から、印象に残っているふたつの文章を書き留めておきたい。
「『壺中の天地』という話が、大むかしの中国にあることは、千恵子も知っている。その壺中には、金殿玉楼があり、美酒や山海の珍味にみちていた。壺中はつまり、俗世間をはなれた、別世界、仙境であった。数多い仙人伝説の一つである。」
川端康成 『古都』
「京都の寺院の石組の庭は、いくつか今に残って知られている。西芳寺の石庭、銀閣寺の石庭、龍安寺の石庭、大徳寺大仙院の石庭、妙心寺退蔵院の石庭などが、その主なものであろうか。なかでも、龍安寺の石庭はあまりに名高いどころか、禅学的にあるいは美学的に、ほとんど神格化されていると言っていいだろう。―――
上野音子はそのどれも見なれて頭にある。――― 西芳寺の石庭は、石庭としては最も古いし、また力強くもあるのではないか。」
川端康成 『美しさと哀しみと』
大徳寺本坊
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