「文庫本の小説など」

 大学生時代は、家庭教師をしながら小遣いを稼いでいたが、小説を買うのは安価な文庫本と決めていた。よく購入していたのは、同じ京橋通りにあった黙平堂であったが、金座街や本通りにあったフタバ図書、金正堂、丸善、広島書店でも購入をしている。学生時代に購入したものは殆どが新潮文庫専用のカバーや、その他包み紙の奇麗なものでカバーを作って文庫本に着せており、それぞれに愛着があり、処分せずに今まで保存してきた。かなりの文庫本には奥付に購入年月日と店名を書いておいたので、それに従って今手元に残している思い出深い文庫本を整理してみた。別に昭和四一年度、大学三年生の時の読書リストと合算すると、読書した書物は以下の通りである。

 (単行本)

『マルクス主義か宗教か』現代宗教講座編 『戦争と平和』トルストイ

『キリスト教』久山康編 『世界の大思想-デカルト』

『世界の大思想-ヘーゲル』

『ヘーゲルの論理学』松村一人 

『思想の歴史 キリスト教とイスラム』

『三太郎の日記』阿部次郎 『嘔吐』『実存主義とは何か』サルトル 

『世界の名著-キルケゴール』 『世界の名著 ニーチェ』 『沈黙』遠藤周作

『世界の大思想-アウグスティヌス』

Le petit princeSaint=Exupéry(七九〇円)

 (文庫本)

『愛と認識との出発』『青春をいかに生きるか』倉田百三 

『哲学入門』『人生論ノート』三木清 『青春論』亀井勝一郎 

『人生論』『性欲論』『光あるうちに光の中を歩め』トルストイ 

『シジフォスの神話』カミュ 『創世記』 

『クォ・ヴァディス』シェンキェビッチ 『夜間飛行』サン=テグジュペリ

『善の研究』 西田幾多郎 『心の糧』ヒルティ 

『愛の無常について』亀井勝一郎(九〇円) 『春の嵐』『車輪の下』ヘッセ

『白夜』ドストエフスキー 『トニオ・クレーゲル』トーマス・マン

『新しき糧』アンドレ・ジイド 『神々は渇く』アナトール・フランス 

『愛は惜しみなく奪う』有島武郎

 「ただ愛するだけでは足らない。如何に愛すべきかを心得ねばならぬ。平民共も亦、否、獣畜でさへ、肉感的悦楽だけなら経験する。が純真なる人間が彼等と差等あるは特にこの点なので、彼は何らかの方法で愛を高貴なる藝術に作り上げて、それを褒め称えその神聖なる価値を知悉し、それを心中に思ひ浮べ、かくてその肉體ばかりか霊魂まで満足させるのだ。」 

       ヘンリク・シェンキェビッチ 『クォ・ヴァディス』


山茶花(金福寺)


コメント

  1. 私は大学時代アルバイトで忙しかった。資本論は読めなかった。代わりに宇野弘蔵の「経済原論」をかなりしっかり読んだ。レーニン「帝国主義論」エンゲルス「共産党宣言」。しかし私はそんなものよりダンスに凝った。
    フロイト「精神分析入門」に衝撃を受けた。
    カミュは「ペスト」が良かった。最近原文で読み返した。

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  2. カミュをフランス語で読み返すとは、素晴らしいですね。僕もフランス語をかじりましたが、ものになりませんでした。学生時代は読書とダンスで充実されておられましたね。

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